マンションの傾斜問題、ディーゼル車の排気がソフトで制御される問題など企業や製品の信頼が失墜してしまう問題が世間で話題になっていて墓石業界も他人事ではないと感じました。墓石の購入費用は高額で一生に一回あるかないかの事です。買ってから後悔した、失敗したという話を聞きますので、失敗しないためにはどういう観点で墓石業者を選んだら良いのか考えてみました。今回はその中でも比較的簡単に見分けられる方法を紹介します。
昔の記憶
ブログを書いている私自身の話になりますが、私は石屋に生まれて現在近藤石材店で働いています。当社は私の曽祖父が創業して現在父親が代表者を務めており3代目、私で4代目になります。自分が小学校低学年くらいの記憶ですが父親が自宅隣の工場で原石を切って磨いて墓石を製作する作業をやっていたのを思いだします。今でも基礎外柵は自社で加工していますし、字彫りや磨き直しの作業も自社で行っています。
当社工場で古い墓石を磨き直ししているシーン
墓石に使う石とは
墓石に使う石は主に花崗岩(みかげ石)ですが、種類によって硬さも違いますし、磨き方も注意しないといけませんし、艶のでかたも違います。加工や研磨を自分自身で体験、経験することによって墓石に向いてる石、使ってはいけない石がわかります。それをふまえてお客様にこれは良い石ですと自信を持ってすすめることができます。採掘元、問屋、墓石商社から聞いただけで、これは良い石ですとすすめるのとは違います。また自分で加工しているため石を大切にします。採掘元から原石を仕入れて墓石の最終的な形にするには何工程もありひじょうに手間と時間がかかります。そういうことに昔から携わってきたうちの父親や職人などをみますと、とても石を大切にしています。当然傷、欠けなどには注意していますが、扱い方が本当に丁寧です。
先日同業の岐阜市にある石屋さんにうかがう機会がありました。そこも親子で石屋をやってみえます。店舗横の作業場に撤去して処分にもっていく墓石が積まれているのをみました。処分するものなので乱雑に扱ってもよさそうなものですが、とてもきれいに整然と積まれてありました。これをみてこの石屋さんもうちと同じ感覚で石を大切にしてるんだなと親近感を覚えました。
本物の石屋なのか販売だけのプロなのか
これらの何が大事かといいますと最近の墓石店は販売するだけのところが増えました。墓石を店舗に並べて販売して、字彫りも施工も下請けに外注丸投げして、ひどいと図面さえも自分で書かない(実際には書ける技術がないと思われる会社もある)墓石店が結構あります。そこの販売員に、この墓石はとてもいいですよ、品質もよくておすすめですといわれても、根拠に乏しいと感じます。販売だけのプロではあるのでしょうが、本物の石屋というのは、設計、加工、施工に自分で携わって石屋の仕事を覚え、良い石がわかってお客様にすすめるものだと考えています。その過程を一切飛ばして墓石を並べて、人から良いと聞いただけ、みただけ、墓石マニュアル本や、墓石商社にいいですよと言われて本来の石屋はそれをそのままお客様には絶対すすめません。
アフター対応の違い
もうひとつは自社工場で今でも基礎外柵の加工、磨きや字彫りを自社で行っているため、簡単な修理に対応できることです。花立てが壊れた、磨き直しがしたい、字彫りをしたいなどの要望にも迅速、正確にお応えできます。これらを外注、下請けにだしていますと、時間もかかる、費用もかさむ、担当者と実際に仕事する人の間に何人も人を介して間違いがおこる、販売員に相談しても販売員が修理さえしたことがないため修理の仕方がわからない、下請けの石屋に聞かないとわからないなど良いことはありません。当社なら比較的簡単に直せるのになあという修理も他社で対応してもらえないため当社に来店される事例が増えています。
本物の墓石を知る石屋
墓石の展示場を見に行かれて工場が横に建っていて石を切ったり、磨いたり、字彫りなど仕事をしてそうな雰囲気があるところは石のことを知っているしっかりした「石屋」の可能性は高いのではないかと思います。
上記に書いたことは一朝一夕にできるものではありません。
マンション傾斜問題を見て感じたのは、販売会社、一次下請け、二次下請けと仕事を下請けに丸投げして肝心の工事がいい加減になされ、責任も不明確になっている点です。本来の石屋は昔から自分自身で1基ずつ丁寧に加工、施工をしてきました。マンションの傾斜問題のように墓石の工事が丸投げ、下請け施工だとしたら不安や疑問を感じますし、自分が消費者側なら手抜き工事も心配になってきます。
結論として墓石店を訪問されて横に工場があるかないかは良い業者を選ぶためのひとつの判断材料になると思います。